しかし「どう読んだら良いのか」などという問いは抽象的すぎて、みなさんにとっては考えるための手掛かりがほとんどないはずです。
たとえば評論読解のためのメソッドは、小説読解にも使えるでしょうか?
たとえば「問いと答えのセットを考える」は?
おそらく直ちに思いつくであろう「問い」、
- 「少年という名のメカ」の正体は何か?
- 「少年という名のメカ」はなぜ作られたか? 目的は何か?
などはもちろん重要な謎として物語をひっぱっていますが、この「答え」は小説中で明かされています。それを読んだ上で「だから何?」と感じているわけです。
- 「主」や「おかみさん」「少女」はどのような気持ちだったのか?
などという「問い」もむろんどうでもいい。
これらの「問い」が有効に働かないのは抽象度の設定が不適切だからです。
「この小説をどう読むか?」という問いは抽象度の階層が高い問いであり、そのレベルを問題にするには、問いの抽象度を上げる必要があります。
といって「この小説をどう読むか?」はそもそも高すぎて焦点が絞られず、手が出ない。つまり上の「どうでもいい」問いよりも抽象度を上げ、なおかつ考えるべき焦点の定まった問いを設定する必要があるのです。
うーん、これでもまだ難しいでしょうねぇ。「問い」を考えることは「答え」を考えることより難しいことが多いのです。やはり。
とりあえず、ポイントは「問いの抽象度」です。
では「対比」は?
実はすぐ目の前に明らさまな対比があります。明白なので、考えてみればすぐに思いつくかもしれません。思いつかないとすれば盲点に入っているだけです。言われてみれば「ああ、そうか」なはずです。
この対比は上の「問いと答え」にも関わります。「ホンモノのおカネの作り方」でも、重要な対比がそのまま中心的な「問いと答え」に密接に関わっていました。同じように「少年という名のメカ」はどのような対比によって、何について語っているのでしょうか?
最初は評論読解のためのメソッドは、今回の小説読解には使えないだろうな、と予想して、使えないことを書くつもりでいたのですが、上のように考えているうちに、それなりに使えるような気がしてきました。
よし、この方向でも考察を展開していきます。
さて、当初の思惑としては、「ホンモノのおカネの作り方」でもやった「部分的な表現を考える」でいくつもりでした。
どこ?
言うまでもないでしょう。末尾の一文「特許出願中。」です。
何これ?
誰もが素朴にそう思うはずです。
だからといってもちろんこれもまた「~とは何か?」では埒が開きません。「逆説」「ホンモノの形而上学」で考えたように、問いを組み直す必要があるのです。
頭の体操に、最初に取り上げようと思っていたのは34頁の「主」とメカの、おかしなやりとりです。これについてはこちらから「問い」を提示します。
- このやりとりの「おかしさ(奇妙さ、変さ)」はどこから生じているか?
- このやりとりからどのようなことがわかるか?
これらの問いの「答え」を考えてください。
上で提示したいくつもの問題は、いずれも事前に考えてほしい事柄です。授業時に初めて考えるのでは、3時間で想定した内容を扱うことはできそうにないからです。
そして授業ではこれらを「教える」わけではありません。そのように「教える」内容に価値があるわけではないからです(もちろん最終的にはこちらの考えは明らかにしますが)。
そして可能な限り自分なりの「答え」を書き出しておいてください。ノートにではなくテキストエディタやワープロで、テキストファイルにしておいてください。授業における「発言」を、チャットへのテキスト入力で代替しようと考えています。その時には、手元のテキストのコピペで済むのが効率的です。
もちろんその時に思いついたら、音声で答えてくれてもかまいません。
考えるべき優先順位は、上に述べた項目の後の方ほど高いと考えてください。つまり、
- 34頁の会話
- 特許出願中
- 対比
- 問いと答え
の順に「答え」を考えておいてください。
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