2020年10月24日土曜日

こころ 11 奥さんと談判したのはいつか

 問題は次の段階である。

 ④奥さんと談判したのはいつか?

 この推論の結果は先述の通り見事にバラつく。

 まずは最初の話し合いの中で、47章の「二、三日の間」と「五、六日経った後」という記述が推論の根拠であることを確認したい。それでも④を特定するための起点が、ここまでの確認事項である⑤の木曜(か水曜)と勘違いしないよう注意する必要がある。起点は⑥の土曜日である。

 そのうえで、結論は次の二択のはずだ。

A 日か月

B 木か金か土

 これ以外はたぶん単純な勘違いだ。起点が違っているか数え間違いである。議論の中で整理されるはずだ。

 では、A「日か月」説とB「木か金か土」説は、それぞれどのような推論に基づいているか?


 問題は「二、三日の間」と「五、六日経った後」の関係をどう考えるか、だ。

 これについての二通りの解釈が、先の二説に分岐する。


A 土曜からの日程を「五、六日」だけで数える。

B 「五、六日」と「二、三日」を足して「七~九日」と数える。


 Aは「二、三日」が「五、六日」の中に含まれる(重なっている)と考えるのである。



 Bは「二、三日」と「五、六日」が連続した日程だと考える。

 「二、三日」と「五、六日」は足すべきか、足すべきではないか? 「二、三日」は「五、六日」に含まれるのか、含まれないのか? 両者は重なっているか、いないか?


 それぞれの読者は、ひとまずAかBかにたどりつき、そのまま続けてその先の③や②の考察をしていたのだろう。

 先述の⑥と⑦は同じ日なのかとか、「永訣の朝」の語り手はどこにいるかとか「Ora」とは誰かとかいった問題もそうだが、自分の読みと違った読みの可能性については気づかないことがある。他人と同時にテキストを読む、授業という場が、別の読みへの可能性を開く。


 現状での支持者は、クラスによってバラつきがあるとはいえ、ABどちらが多いとも言えない。

 重要なのは「正解=結論」ではない。結論にいたる推論の妥当性についての議論である。


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